新作能「庭上梅」
同志社創立140周年記念事業として、新作能「庭上梅」が同志社校友会主催により11年ぶりに寒梅館で上演。
全同志社の共有の財産として、日本国内、海外の校友会ネットワークを通じて、新島が目指した良心教育を再確認し、「同志社 200 年の大計」に向け、広く新島の精神を共有したいとのことからビデオを制作いたしました。
※「庭上梅」は過去、2005年のハーディホールでの初演から東京国立能楽堂、名古屋能楽堂と3回上演されましたが、いずれも肖像権・著作権問題があり、公表できる映像は存在しておりませんでした。2016年1月16日、制作責任者 井上裕久氏(能楽 観世流シテ方 同志社大学能楽部観世会講師)と相談し、同志社校友会が著作管理をするという条件で、ダイジェストビデオの公開が許可されました。
創作能「庭上梅」解説
元同志社大学神学部教授
本井康博先生

同志社の創立者、新島襄(1843~1890)を為手(シテ)とするこの新作能は、2005年11月26日に同志社大学能楽部紫謡会(しようかい)によって同志社大学寒梅館で初演された。以後、東京、名古屋で上演され、2016年1月16日に同志社創立140周年記念として寒梅館での再演が実現した。このビデオはこの時に撮影されたものである。
新島は寒梅が好きで、2首の漢詩を残す。「庭上の一寒梅 笑ふて風雪を侵(おか)して開く 争はず又力(つとめ)ず 自(おのず)から占む百花の魁(さきがけ)」ならびに、「真理は寒梅の似(ごと)し 敢(あ)えて風雪を侵して開く」である。
そのうち、終焉の地、神奈川県大磯で詠まれたと伝わる「庭上の一寒梅」が、創作能「庭上梅」(ていしょおのんめ)のモチーフになっている。新島は、「笑ふて」、あるいは「敢えて」風雪を侵して開く寒梅の姿勢に共鳴し、自己の生き方を寒梅に投影しているかのようである。そこには開拓者、あるいは先駆者としての凛とした意気込みが、感じとれる。彼の一生は、寒梅的であった。
この舞台でも新島は、「我もまた世の魁とならばや」と高らかに宣言する。厳寒の中でも早春を見据えるのが、新島のライフスタイルである。開花する寒梅に倣おうとした彼の意欲と想いは、「庭上梅」を通して、現在の私たちの胸にも届き、共鳴を生み出してくれる。